2017年4月30日日曜日

なぜ誰かと交際するときに契約書を作る人がいないのか

ネタでよく弁護士は、誰かと交際しようとするときに契約書を作成するとかいう話があります。

しかし、私の周りで、誰かと交際するときに契約書を作ったという人はいませんでした。

誰かと交際することも、立派な合意です。なぜ契約書をつくらないのでしょうか。


「恥ずかしい」「風情がない」「信頼していないと思われるから」というところはあるのですが
法律的な部分で大きな理由は、ずばり「揉めてもお金の問題が発生しない」からなのです。

通常の取引では、取引を解消するとき、どうしてもお金の問題が発生します。特に相手が契約違反をした場合、損害賠償を求めることとなります。

しかし、恋愛では、別れてしまったとき、たとえ浮気をされたとしても、別れてしまえばそれで終わりで、損害賠償請求をするような人がほとんどいないといえます。

通常はお金の問題が発生しないからこそ、契約書を作るような人がいないのです。

ただ、これはあくまで「通常」の場合です。

「婚約」にまで発展してしまえば、損害賠償の問題となりますので、やはり契約書か、契約をしたことの証拠(結納)は作っておくべきなのでしょう。また、浮気をしたら罰金をとるなどと定めたい場合は、やはり契約書を作るのがよいのでしょうね。

まあ、恋愛で契約書を作るのは、「相手を信頼していない」と思われる可能性が高いので、個人的にはすこしどうなのかなとは思ってしまいます。

弁護士 杉浦智彦

2017年4月29日土曜日

自社のひな形は「定形約款」にあたる?

民法改正が行われようとしています。
その中の目玉の一つが「定形約款」に対する規制です。

定形約款に該当すると、たとえ相手が事業者であっても、消費者契約法10条と同様の規制、つまり
ア)相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項で、
イ)その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害するもの
は、「合意をしなかったもの」とみなされ、拘束力は生じません。

ところで、自社で、基本的に修正を想定していない「ひな形」を使っているという企業は多いかと思います。
これは「定形約款」に含まれるのでしょうか。


答えは「いいえ」です。


ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものを「定形取引」といいます。

この「不特定多数の者」というのは、相手方の個性に着目しない、つまり「誰であっても同じ」ものでなければなりません。

たとえひな形を使うとしても、修正に全く応じないと言い切れるかといえば、そうではないですよね?そのため、取引相手の個性が影響しうるといえるので、「定形約款」には該当しないのです。

定形約款は、利用規約などが典型例となります。そのような場合に注意していただければと思います。

自社の契約書・利用規約のひな形が定形約款に該当しないか気になる方は、弁護士までご相談ください。

弁護士 杉浦智彦
https://keiyaku-check.pro

2017年4月28日金曜日

給与の立て替えシステムは貸金業法になるのか

賃金の前払いシステムが最近注目されています。

貸金業法は、これまで、会社から従業員への貸付けについては、貸金業法の対象外としてきました。貸付けといいながら、給与の前借りでもあるからです。

給与の前借りは、計算がとても面倒で、これまでも敬遠されてきました。

しかし最近、給与前払いについて、第三者企業に委託をして簡単に行えるようにし、福利厚生の一つとして利用されてきました。

最近だと、さくら情報システムの「即給」などが有名ですね。
https://www.sakura-is.co.jp/solution/ps-000-038.html

ただこれ、実質的に貸金業法に反しないのでしょうか。

会社から従業員への純粋な貸付けであれば、貸金業法の対象外となります。
これを、第三者のシステムを使ったからといって、その貸付けの性質が異なるわけではないので、貸金業法には違反しないでしょう。

問題は、前払いするお金が、そのシステムを供給している企業で用意しているような場合です。
その場合、システムを供給している企業が、会社に対して、お金を貸している構図となってしまいます。そのため、そのシステム供給会社は貸金業法に違反しているという結論となりそうです。

なお、会社が勝手に貸付金を従業員の給与から天引きすることは許されません。「相殺合意」といって、会社が従業員との間で、相殺するということについて合意書を交わすことが必要となります。

便利な世の中で、どこかで割り切りが必要になるかと思いますが、弁護士のチェックにより、細かい部分まで配慮できると良いかもしれません。


弁護士 杉浦智彦
https://keiyaku-check.pro

2017年4月27日木曜日

契約書に実印は必須なの?

日本の契約書には「本契約が成立したことを証するため、当事者の署名押印をして保管する」という記載が多いです。

ところで、この「押印」は実印でなければならないのでしょうか。

答えは、「実印でなくてもよい。ただ実印だと安全」ということになります。
もっと言ってしまうと、契約書の成立のためにはハンコがなくてもよいのです。

先に、どういう形でトラブルになるかを話させてください。

典型的には
「こんなもん、会社の代表が押すわけがない」という形で、作成者が誰なのかを争われてしまうというトラブルです。

このとき、実印、つまり印鑑証明が出ている印鑑でハンコを押していたなら、「代表の人以外、これを押すことなんか難しかったでしょ?」と言って、トラブルをすぐに収束させることができるのです。

つまり実印はメリットとして、「その契約をしたのがその人なんだ!」と言いやすいというところにあります。

認印でも、そのような機能がないわけではないです。ただ、たとえば100均で購入したものでもよく、それは誰でも押すことができますよね?だから仮に「これは私が押したものではない」と言われてしまうと、トラブルが長期化してしまうことも多いのです。

実際のところ、メールなどで証拠が残っていれば、実印でなくても、契約作成者が争われることはほとんどないので、信頼関係がある人との間であれば、認印でも、それほどトラブルになりにくいとはいえます。


2017年4月24日月曜日

利用規約って必要なんですか

Q)インターネットでビジネスを始めようかと思っています。ほかのウェブサイトを見ていると、「利用規約」というものが定められています。これは契約書とは違うのでしょうか。サービスを提供するとき、利用規約は必ずなければならないのでしょうか。


 インターネットでの業務にそって、今回から法律コラムを連載していきます。今回は、聞いたことはあるけれども、よくわからない「利用規約」の話です。利用規約というのは、そのサービスを利用するルールを定めたものです。たとえば、掲示板サイトで「転載してはならない」とか「著作権は◯◯に帰属する」などが定められています。利用規約は、当事者が署名などをしないため契約書そのものではありません。しかしながら、そのルールに従うということを前提にサービスを受けるということを約束しているということで、利用規約の内容は、契約の一部となると考えられているのです。利用規約を含め、このような定型的に処理するための条項を「定形約款」と言ったりもします。(定形約款は、民法改正によって整備がされることとなります。これは後日解説します。)では、利用規約が必要なのかと言われると、なければ契約が成立しないというわけではありません。サービスを利用する側と提供する側が単に合意をすれば契約は成立するのです。しかしながらトラブルが発生した時、そのトラブルについてどう処理するかわかりませんよね。また、知的財産が関わっていたりすると、やはり利用規約で処理しておくことが紛争解決に役立ちます。そのため、利用規約を定めるのがスタンダードであるといえます。

週末のおでかけ日記
先日はじめて野毛山動物園に行ってきました。びっくりしたんですが、ここって無料だったんですね。無料ではあるのですが、よく鳴くシマウマや寝続けるライオンなど、いろんな動物がいて、充実していました。桜が散りかけていて、その桜の花びらが動物に降り注ぐ様子は、風流を感じました。
まあ、動物の多様性にも目が行ったのですが、むしろ、この動物園の面白さは客層の多様性でした。「絶対水商売の帰りだろ!」としか思えないような人も多かったです(笑)。(文責 杉浦)。

【弁護士法人横浜パートナー法律事務所 新・会社を守る法律相談にて連載中】

契約書チェックのコツは、変更してそうなところを探ること

契約書チェックのコツの話をします。 実は、多くの契約書には、「元ネタ」があります。 それは、ひな形であったり、さまざまです。 そして、契約書チェックで多くの弁護士がしているところは、その元ネタと違う部分を探すことなのです。 ひな形のままであれ...